その頃は、たくさんのけものや鳥が住んでいました。
仙吉の家のまわりにも、よく兎やきつねがやってきます。昼でも畑のまわりをかけて行くのが見えました。
その年は春が遅く、いつまでも雪が残っていましたが、けものたちは早く春が来るようにと雪のまだ残っている山や野をかけめぐっていました。
若いきつねはオシャレでしたので、ほかのけものがまだ毛替わりもしないうちに、はやばやとよごれた長い冬毛をぬいで短かな夏の毛にしたのです。
そして、
『どうだ。きれいになったろう。もう春になったのだ。君たちもそんなうすよごれた冬毛をぬいで、早くきれいな毛なみになったらどうだい。ホラ。見てごらんよ。短くてきれいだろう。』
コンコン、トントンと踊ってみせました。
ところがいつまでも雪が残るような年でしたので、なかなか暖かくなりません。
毎日毎日少しずつ暖かくなってきますけれど、朝晩はとくに冷え込みましたので、とうとう風邪をひいてしまいました。
きつねは大きな木のうろの中でからだを小さくまるくして寝ていましたが、風邪は治りません。そのうちに、春には珍しい程新しい雪が積もりましたのできつねはすっかり寝込んでしまいました。
毎日毎日一生懸命養生をしましたが、とうとう声が出なくなりました。ゴホン、ゴホンとせきが出て、コン、コンとなこうとしますけれど声がかすれていつもの声になりません。
きつねはすっかり弱ってしまいました。
そんな時、長老のきつねが見舞いに来ました。
『なんということをするのだ。まだ寒いというのにオシャレをして、夏毛などに着替えるから風邪をひくのだ。
セキが出て声が出ないというなら、昔から言い伝えのある、フキノトウを食べて寝ていることだ。
なるべく小さな、まるまるとしたフキノトウを食べるとよいぞ。
あまり心配をかけるものではないぞ。』
と、いって帰りました。
風邪をひいているきつねは、ただ小さくなって長老きつねの言葉を聞いていました。
長老きつねが帰ると、早速川辺の落葉などの下をかきわけて、小さなまるいフキノトウを捜して食べました。
とても苦い味がしましたが、長老きつねのいうとおり、セキがとれ、コン、コンとよくとおる声が出るようになったといいます。
参考
フキノトウは、昔から咳どめの漢方薬として知られています。
アクが強いので採ったらすぐに、灰か重曹を入れた湯でゆがいて半日位水にさらし、天ぷら、いためもの、ねり味噌などに使います。
薬味にするときは、みじん切りにして使いますが、おつゆに入れますと春の香りと苦味があります。
皆さん、『なけるようになったきつね』いかがでしたか?。
次の民話は大木になった杖の木です。お楽しみ下さい。
トップページへもどる
岩見沢の民話のホームページへもどる
私のいわみざわへもどる